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>> シンフ ノ キモチ …(新父の気持ち) <<


12月某日  「  トツキトウカ  」



子供も彼女もひとまず落ち着いたため

僕は一度、関東の自宅へと戻ることにした。

電車で7時間ほどの移動だが、

車窓に映る景色がなんとも言えず心地いい。




ほーとした感覚の中、うつらうつら色々なことを思った。

そして

なんで子供が産まれるまで、10月10日もかかるのかわかったような気がした。

きっとこの10日10日という時間は子供が胎内で育つ時間とともに、

自分自身をも胎児と一緒に鍛えなおすために必要な時間なんだろう。

妊娠した当初はあわてふためいた僕も、10ヶ月たった今ではかなり落ち着いている。

そして物事を考える基準の中心が自分ではなく、お腹の中の子供、そして子供を宿した彼女

へと変化している。

妊娠が発覚した当初のあのパニック状態を思い出すと

なんか不思議な感じだ。




そもそも

僕はなぜか子供を持つことなど出来ない

不吉な星の下に生まれてきていたような気がしていた。

そう頑なに思い込んでいた。

そして子供のいない人生を自分で勝手に

シュミレーションしていた。

でもそれはただの思い込みだった。

錯覚だった。

そして僕は子供を持てた。

嬉しかった。

本当に嬉しかった。

そしてこの産まれてきた子供のためにも

真剣に生きなければならないと強く思った。

でも、その真剣さというのは決して頭をきっちり7:3にして

今までの生き方を覆すというようなものではなく

自分はどう生きてゆきたいのか、

どう生きてきたのかを何十年後かに、

しっかりと子供に伝えられるかどうかというような真剣さ。

それが一番大事だと思った。


そんな僕の熱い思いを冷やかすように

電車の外はえんえんと雪景色だった。





…つづく

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