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Vol.4 夕焼けのピンサロで負け犬ひとり秋の空を仰ぐ







工藤28歳はひどい会社で働いていた。

100人、入社したら、120人やめるような、

いわゆるブラック会社。



IT、IT、クリエイティブ!!!

と、言っていることはかっこいいが、内容はサラ金と一緒。

客から金を取れ、客から金を盗れ、取れないんだったら、

てめえ、自腹で払え。

そんな鬼畜のような上司の命令に、実際、自腹を切る先輩も。

まじかよ。おい。いくらなんでも(笑)




いつも思うことはひとつ。

こんな会社入りたくなかった。

しかし、入りたくなかったが、

ここしか入れてくれなかったんだから仕方ーがない。


これも、すべて、まともに

就職活動をしてこなかった報いか!!



今日も帰りは12時すぎなんだろう、

場末の酒場、安酒で、安いニヒルなため息を。





たまに部屋に来る、女の名はキョウコ。

何かを飲ませる食べさせるという条件で会ってくれる。

しかし、目の前で平然と、

あんたみたいな男とは、とりあえずつきあっているだけ、


あんたは私にとってバイブみたいなもん、

あんたのDNAなんて残したくもないし。


そんなことを、フェラチオしながら普通に言う女。

まあ、お似合いといえばお似合いか。

悲し。








そして、ある日、

そんなブラックな会社すら、

クビになるブラックな俺のブラック^^


”部長、たまには、まともに休みをくださいよ。

なんで、こんなに働かなくちゃいけないんすか。”

こんな、当たり前のことを言っただけで、

クビになる会社って一体、どんな会社なんだ、一体。


労働基準法 イズ デッド。

この国に労働基準法なんかないんだぜ。母さん。








おまえみたいな奴は死ね!!!

という、会社からの、ありがたい言葉を餞別に、

はじまる、はじまる、

無職。プー。





金なんか絶対に貸さないよ。

そう言って、携帯に出なくなる女。

わかりやすくて、すがすがしいほどじゃねえか!!!(笑)

なんか、もういろんなことがどうでもいいや。






もう一生、就職なんかしたくない。

いい、もう、ほんと、いい。

もうさ、俺が入れる会社なんてさ、

どうせ、全部ブラック会社なんだろ。

うう、ううう。

就職したって、きっと、同じことの繰り返しだろ。

うう、ううう。

積極的に、嗚咽 アンド ゲロ。







所持金18万円。

はじまる、はじまる、

酒びたりライフ。








目覚めると、いつも、

二日酔いなんだか、三日酔いなんだか、

四日酔いなんだか、わからない日々。


昼はゴミ屋敷のような家にいて、

夕方になると、酒を求めて、

盛り場をふらふらとうろつくような生活。

たまに、突発的に、道端で、ゲロを吐き、

近くにいた、チンピラにめちゃくちゃ殴られる。

ついてない、

なんてついてない。

そんな生活。








ある日、いつものように、昼下がりの盛り場、

ふと目に入ったピンサロの看板。

昼から酒を飲ませてくれるんじゃなかろか?

たまには、そういうシチュエーションも面白いんではなかろか?

無職の生活にも、サプライズを、潤いを!!!

というポジティブな理由でもって、

工藤、ふらっとその、ピンサロにはいる。





受付のおじさん、パンチパーマ怖い^^

別に、女の子のご指名はないですよ。

新規のお客ですよ、あやしくないですよ。

酒が飲めりゃーいいんですよ。








わかりやすいピンクのボックス席に通され、

ウィスキーの水割りをちょうだいと頼むと、

時間内、なんと、飲み放題、ひゃほー。

酒、酒、酒、と、腐った酒天童子みたいな顔をしているところで、


現れる、ジュリちゃん。

ジュリちゃん、めちゃくちゃ、可愛い・・・。





さ、ズボンぬいで、気持ちいいことしよっか!

おしぼり片手に、可愛い声を出すジュリちゃん。

それを遮り、いや、我は、そんな無粋な目的で来たのではないのだ、

我は我の悲しみを癒すために、


一杯の酒を、ああ、

一杯の酒を求めにやってきたのだ!!

だから、お嬢さん、我には構わんでくれ、

などということを、へにゃへにゃした感じで伝えると、

あら、ジュリちゃん、急に神妙な顔をする。

そして、こんなことを言う。





”何か、悲しいことがあったのね。。。”



そう!!!そうなの!!!!僕ちん、かなしいことがあったの!!!!

僕ちん、悲しいロンリーボーイなの!!!

とむしゃぶりつきたい思いをぐっと抑え、

い、いや、我は、そ、そんなことは。。。

と言うも、



”いいの!言わなくても、ジュリにはわかるんだから。

ジュリも、悲しいことが、あってね、

好きだった彼氏(暴走族だったらしい)が、事故で死んじゃってね。

凄い悲しかったんだけど、その彼氏の借金を、かわりに返したくてここで頑張ってるの。

だから、わたしには悲しい人のことがすぐにわかるんだよ。

でもね、それも、もう少しで終わるんだ。がんばったもんね。”









借金700万円。










工藤、急に恥ずかしくなって、

そそくさと、店を出て、

夕焼けのピンサロの前、ひとり秋の空を仰ぎ、





明日から、また、多少は頑張ることにする^^









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TEXT PHOTO / MIZUHO

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MIZUHO (木藤瑞穂) 千葉市幕張在住

FSL編集長/フリーバードフォトレーベル代表

1971年生まれ。幼少の頃から挫折と現実逃避を繰り返し、全てを世界のせいにして生きてきたが、果てしない苦しみの果てに、息子が産まれ、ついに何かを理解する。現在はフリーの写真家。そして、1児の父親として、この世界を歩く。もちろん、負け犬。今夜も悲しい夜空を見上げ、どこかで吠えていることでしょう。今度、一緒に吠えますか(笑)


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