「くっさ！！」

確かにそう聞こえた。

でも、現れたのはドイツ人のダニエルと名乗る若い男。

ドイツ語で挨拶をはじめたし、天使様とドイツ語で会話してるし、

私には英語で話しかけてくれる。

だけど、なんか時々、

「ネ申ですね。」

と、絶妙なタイミングで日本の若者の言葉の使いまわしを話す。

なんだ、この男・・・『俺様』とか言うし変なやつだな・・・と思わせながらも、私の状況を知ると、一緒に家探しを手伝ってくれるというではありませんか。

天使様ももちろん手伝ってくれてるっていうし、またしても強力な助っ人現る！！

私、円もユーロもたくさん持ってないが縁はたくさんもってるなぁ。

あぁ、みなさん本当によろしくおねがいいたします。

私はなんてったってドイツ語できませんからね、だからといってずっとできないままだと自分が困るし勉強したほうがいい。

そんなことを思っていたら突然天使様が、

「2人さ、タンデムパートナー（お互いの母国語を教えあうパートナー）になればいいじゃん！

ゆきえちゃんドイツ語習いたいんだよね？

ダニエル、日本オタクだし、どうせ予定何もないでしょ？

ゆきえちゃんは来たばっかりだから今度ミュンヘン市内の観光と勉強してきなよ。」

「それいい！！ぜひ！！」

ちょうどドイツ語勉強微熱が出たところの私はすぐにそう言い、

ドイツ人の彼は天使様の読み通り予定もなく、右に同じく私も仕事以外予定もなかったので、

すぐにタンデムパートナーとしての関係が始まりました。

ちょっとここに来て、上向きになってきたんじゃないでしょうか。あとは、住まい。

正直、今の仕事は住まいが欲しくてはじめた仕事。

なくなった今、なんの縛りもなくなった。辞めたい。

だけど、仕事も覚えてきたし、みんな優しいし、なんてったって、職がない状態の家探しの難しさを知ってしまったし、辞めないほうが生活は確実にできる。

あーどうしようどうしよう。

その頃の私は、そんな葛藤を抱えておりました。

そんな、葛藤を打ち明ける前に、自身もワーホリでドイツに来た経験のある天使様は、



「ねぇ、そもそも何でフルタイムで働いてるの？せっかくのワーホリなんだからもったいないよ。


フルタイムだったら何にもできないよ、自由に動けるんだしさ、ミュンヘンじゃなくても色んなところいけるじゃん。

それに、ここのアパート契約ダメになってよかったかもよ？ここの契約は退去の３ヶ月前に言わないといけないし、ワーホリのときにやたら契約とかしない方がいいよ。」

と、私の本心を代弁するかのような後押しセンテンスを仰せになるので、

加速ついた私、翌日にボスに辞める意思を伝えていました。

またしても、後先考えずに。

それでも、月日は流れるわけで、なかなか条件に合う部屋が見つからないままに

天使様のうちに滞在できる日数は少なくなってきたある日、またしても天使様が

「ダニエルんちはどう？ここより広いし、便利なところに住んでるよ。

たぶん、頼んだら助けてくれるよ！そうだよ、そうだよ！二人趣味あってたじゃん。

ダニエルいい人だよ。おすすめ・・・ん？だよ。」

今、あなた、おすすめのところで首をかしげた。

でも、ユースホステルに戻りたくなかったのでとりあえず、タンデムの約束と、私がショートステイできるかメールをしてみることに。

何度かのやりとりの後、来てもよいとの返事をもらい、

部屋探しタイムに猶予ができたと一安心し、これからの部屋探し計画をたてるために



「ところで、いつまでそこにいてもいい？」



という内容を仕事の合間に、グーグル翻訳の手を借りていそいそと送りました。

しかし、返事がこない。

・・・返事がこない。

・・・・

なんでだろう？

英語間違ったかな？と自分が送ったメールを確認してみると・・・

・・・・・！？


いやぁああぁあああぁあああああぁ！！！！！

『あなたと永遠に一緒にいることができる？』

ってプロポーズしとるがな！！！！！




私の初プロポーズが異国の地で無意図的にすんでしまった・・・

グーグル翻訳のお蔭様で。

どうせなら、もっと勇気を振り絞ってとかロマンチックにとか計画的に楽しみたかったわよ。

とにもかくにも、恥ずかしい・・・

そりゃあ、返事に困る。

最近会ったばかりのただのタンデムパートナーが自分と結婚したがってるって重過ぎるでしょうに。

「天使様、どうしよう誤ってプロポーズしてしまいました。」




天使様、笑っておられますが、私、赤面というものを久方ぶりに経験しております。

一騒ぎし狼狽が少し落ちついた頃に、天使様の英語力もお借りし訂正メールを送ったところ、

別に好きなだけいてもいいとの返事が。

「もう、一緒に暮らしちゃえばいいじゃん。」


と天使様は簡単に言い、

私も、とても素敵な人だと思いますが、そもそも男女だし、

男女の仲ほど不確かなものありませんし、そこを家にするのは、、、、、

ん？でも、まじめに働いてても部屋なんて急になくなるもんだしな、

ドイツ人と暮らしたほうがドイツ語覚えれるかも。

しかも、よくよく思い返してみればちょっとイケメンだし。

これ、日本語もしゃべれるドイツ語を教えてくれるイケメン付部屋をゲットっつーこと！？




と、これまた軽いノリで転がり、

タンデム兼生活のパートナーとなった男との生活を始めることにしたのであります。

そして、彼との時間は、とてもロマンティックな甘い甘いもの・・・

なのは、初めてのデートで飲んでいたホットチョコレート。

ダウンタウンが大好きという彼は、私が「lecker！（レッカー：美味しい）」と旅ガイドに載っていたドイツ語を使ってみては、

「キミの一番重要なドイツ語は“lecker”なの？」などと、甘くないツッコミをいれてくる。



そして、歩けばすました顔で

とぉ〜りゃんせ〜とぉ〜りゃんせ〜・・・

と歌ってやがる。

お、お前、何人だ！！！！！

知れば知るほど、そんな疑問を抱かせる、はじめに感じた変なやつというのを確信させる男でした。